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設計・建物には「人」が表れる

都会では、大きな商業ビルが多く、「お店」や「病院」はほとんどその中に入っているのかもしれません。

私は田舎の方に住んでいるので、お店や病院は、「専用の建物」な場合も多いです。
そんなお店や病院は、「オーナーの考え方」が建物に如実に表れるものだなぁと最近つくづく思います。


今日は、病院に行って、一応設計者の端くれである私が感じたを書きたいと思います。
(婦人科疾患があるので定期的に通っています)
病院名などは一切明かしません。病院に対する口コミではなく、私個人が勝手に思っているだけの日記のようなものですので。
そんな考え方もあるんだな~くらいの感覚で読んでいただければと思います。


設計者視点で見る「イマイチ」な設計


私が通っている病院(婦人科)には、トイレがひとつしかありません。
その病院は、大体いつも待ち時間は1~2時間ほどかかります。待合の座席すら足りていないこともあるほどです。
また、採尿の検査もあるので、多い時はトイレに10人近い列ができます。

どう考えても、建物の設計と診察の流れ・人数が合っていない。

建物の規模・予算・駐車場の計画・法律…設計にはいろんな要素が絡みますので、簡単に「だめな設計だ!」と言う気はありません。やりたくてもできないことがあるということは、私も設計者の端くれとして十分分かっています。
しかし、私はやはり、他の何かをけずってでもトイレは2つは設置すべきだったのではないか、と いつも思ってしまいます。


「ん~?」と思うのはトイレだけではありません。
たとえば中待合室。狭いのですれ違うこともできません。そもそもスタッフさんが動き回る場所が患者の動線と交差しています。それに加えて 狭いモンだから、患者同士・患者とスタッフさん、それぞれが遠慮して道を譲りながら行動する姿もよく見かけます。ベビーカーを押して来られた方は一苦労されています。しかも、中待合にいると、診察室の中の会話も結構聞こえますので「イマイチだなぁ…」と思ってばかりです。

この病院が、もう20~30年前の建物とかだったら分かるんですが、まだ開業して10年ほどの病院なので、設計に対する考え方は十分「最近の考え方」の下で設計されたはず。


設計に表れている「考え方」


この病院に行くたび、「院長が、患者さんを大事に思ってないことが伝わる設計だな」と私は思っています。

院長が、開業する前にお医者さんとしてずっと経験して感じてこられたことが、開業にするにあたって建物を設計する段階で「設計士への意見・要望」になると思います。
きっと私が通っている病院の院長は、患者さんの動きや不便について、もともとほとんど関心がなかったんだと思います。

私も診察してもらっていて一度も院長のやさしさを感じたことがなく、「別の病院がいいけど、近くに他の病院がないから仕方なく通っている」ような状態です。それでも、診察や治療内容に疑問があって質問をしたら、しっかり答えてくれます。ただ、先生の方からたくさんの情報をくれたり安心する言葉をかけてくれたり、そういうことはありません。
待ち時間が1~2時間は当たり前ですが、待っている患者さんへの配慮というものも特にありません。
「最低限トイレはあります」という建物の状況と、「最低限の診察はちゃんとします」という方針が似てるな~と感じます。



以前に別の婦人科病院に行ったことがありますが、待合や付き添いの人が使うトイレは個室が2つ、それとは別に、採尿するためのトイレが診察室のすぐ傍にありました。
この病院は、トイレだけではなく、待合室の内装、患者の動線や気持ち、スタッフさんの動線、それら色んなことが「よく考えてられているな」と感じました。
ではその病院の診察方針はどうかというと、やはり「先生やスタッフさんが親切だな」と感じました。
番号札制度を使って待っている患者の待ち時間軽減や順番の分かりやすさについて対策されていたし、看護師さんや先生に不安なことを相談したい時に 他の患者さんを気にせず話せる環境にもなっていました。中待合に診察室の中の声が聞こえることもありませんでした。スタッフさん視点に立っても、患者さんと動線が交差せず、動きやすい計画がされていました。
(ちなみにこの病院は、とてもいい病院だと感じたものの、場所が遠くて定期的に通いづらいため、この病院に通い続けることができませんでした)


自分では意識していませんでしたが、初めて病院やお店に入る時、やはり仕事柄、無意識に設計者視点で建物を見ているようです。
その時 初めに感じた違和感と、患者として通い続けるうちに 診療内容から受ける印象が徐々に合致していきました。
やはり「建物」には「人」が表れているんだなとつくづく思います。

もちろん良い設計ができるかは「設計者の腕」でもあるわけですが、「設計者」がいくら良い提案をしても、オーナーが「そこまで必要ない」と言う意見を変えなければそれで終わってしまいます。なので、一番色濃く表れるのは、やはりオーナーの考え方だと思います。

設計視点で見る「良いお店・病院」もおもしろいですよね。
「何をもって 良い設計なのか」は難しいですが、簡単に言うと、あなたがそこを何度か利用してみて、不便や違和感を特に感じなければ、それは「よく考えられた設計である」と言えると思います。



住宅にも表れてる


ところで、同じことは「住宅」にも言えます。

先日お伺いしたお宅では、どうも「台所や水回りの生活スペースが追いやられている」ような感覚を受けました。

後から分かったことですが、そのお宅は「ご主人が絶対」という価値観で、家の設計の際にも、すべてご主人が一人で決められたそうです。それでも、ご主人がちゃんと家事もなさるお宅であれば きっと違っていたと思いますが、そこのご主人は「THE 昭和のガンコオヤジ」を絵に描いたような方らしく、家事は一切されないそうです。そんなご主人が主体になった家なので、はっきりいって最低限の家事動線もへったくれもない仕上がりでした。

この時も、お伺いした時に感じた違和感と、後から分かったご家族の価値観が一致して、「ああ~だからあの間取りなのか~」とひっそりとひとりで納得していました。


そうそう、こんなお話もありました。
奥様がすべて取り仕切って新築された家に、ご主人が帰りたがらなくなってしまったそうです。内装も家具もすべて奥様のお好み。奥様にとっては「自慢の家」になったようですが、せっかく新築したというのにご主人にとっては「居心地が悪い」と感じる家になってしまったようです。結構個性的な内装だったそうなので、それが原因かと思います。ご主人も「好きにしたらいいよ」と言っていた気持ちに嘘はなかったんでしょうが、いざ出来上がった空間で「自分がそれをどう感じるか」までは やはり素人さんですから、想像しきれなかったんでしょうね…。
(※私が設計に携わったおうちの話ではありません)


住宅には必ずその家の主となる人の考えが表れます。
ただ、病院やお店と違って「人生を過ごす」場所ですから、一人だけがやりたいように設計していくというのは、あまり好ましくないですね。


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Theme: 住まい - Genre: ライフ